『ヤマトナデシコ七変化』が、小説になりました!!
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『ヤマナデ』が、小説でしか読めないオリジナルストーリーに!! スナコと恭平、武長、雪乃丞、蘭丸たち、おなじみのメンバーが、謎の中華屋敷を舞台に、愛と笑いの大活躍!!
○こんなシーンや…
「武長くんーーーーー!?」
乃依ちゃんの悲鳴のような叫びが屋敷の外まで響き渡る。
「のののの乃依っち!?」
武長は女装していた。それも完璧なまでに美しいアジアンビューティーに。それをエスコートするのは、髪を七三に分けてビン底丸メガネをかけるという、微妙な変装ルックの恭平。
○こんなシーンも…
人々が見守る中、2階の窓が外側に開いて煙が薄く立ち昇った。
「飛べ!」
叫び、恭平が両腕を広げる。
「いいから飛べ! 中原スナコ! 早く!」
その場にいた全員が、場違いな幻想にとらわれていた。
白いシャツの胸をはだけさせた絶世の美少年。見上げる先には黒髪をはためかせた少女の姿が。吹き上げる風にあおられて、たなびく煙が濃くなる。
「ヤマナデ」ファンなら、ぜったい読み逃せない!!
KCノベルス
『オリジナル・ノベル ヤマトナデシコ七変化~真夏の中原軒へようこそ!~』
作/中村美音 原案・絵/はやかわともこ
もちろん、はやかわ先生の描きおろしイラストも!
大好評発売中!!
講談社刊 定価 840円(税込)
「プロローグ」を大公開!!
「つづきをよむ」をクリックしてね!! →
プロローグ
「ブスは嫌いなんだよ」
中学時代、好きな男子にそう言ってフラれて以来、ホラーやスプラッタに囲まれた引きこもりライフ。人体模型のひろしくんやあきらくん、骸骨(がいこつ)のジョセフィーヌたちを傍(かたわ)らに、自分の部屋(サンクチュアリ)で時を過ごすのが最高の幸せ。
おしゃれしたり自分を磨いたり。そんなものは、なんとかすればなんとかなる女子だけ、なんとかすればいい。世の中は夏休み。
この街の商店街でも、子供たちが元気よく走り回る。どこにでもある商店街の、どこにでもある一日。
「あーら、こわい女の子、いらっしゃい! 今日も暑いねぇ」
「……トマトください」
絞り出すような声の主は、長い黒い髪をお団子にひっつめて、首回りがへたったTシャツに中学時代の学校指定ジャージ。明るい夏の日差しの中で、ひときわ暗いオーラをまとい人々を脅(おびや)かす。
通称コワい女の子。中原(なかはら)スナコ15歳、高校1年生。なぜか商店街では人気者。
スナコは夏が苦手だった。北海道生まれで暑さに弱いせいもあるが、とくに夏の太陽がダメだ。スナコが最も苦手とするもの、それは「まぶしいもの」。闇に溶け込んで生活することにあまりにも慣れ親しんでしまったため、太陽の光のように「まぶしいもの」には目がくらむ。耐えられない。
だが、家事全般を取り仕切る身として夕飯の準備を怠るわけにはいかない。夏休みなので、今日のように昼食を作らないといけないときもある。
(ああ、こんな日は、クーラーが効いた部屋で暗闇に溶けて過ごしたいのに。夏休みに見倒そうと思って買った「死霊(しりょう)のエクトプラズム」DVDボックスも、まだ2巻しか見てないし)
(でもさすがに、冷蔵庫に調味料とお豆腐半丁しかないんじゃどうしようもないわね)
だから命を削る覚悟で35度を超える猛暑の中、買い出しに出てきたのだが。
「スナコちゃーん!」
スナコの視界がスパークする。学校一の美少女、乃依(のい)ちゃんが、美少女らしく汗もかかずにやってくる。
揺れる明るめの髪に縁どられた小さい顔。健康的なナイスボディーに、胸元のあいたカットソー。ショートパンツからのぞいたスラリとした脚。
「今から武長(たけなが)くんのところに行くところなの。一緒に行こ! ……って、どうしたの? スナコちゃん」
「ま、まぶしい……」
「そう?」
乃依ちゃんはスナコの反応には慣れっこだが、ただでさえ暑さと夏の太陽にノックダウン寸前のスナコにとっては、乃依ちゃんのまぶしさは過酷な追い打ちである。
「今日はねー、夏休み初のデートなんだー。気合い入れて昨日は半身浴2時間にクレイパックでしょ、お風呂上りにヨガもやって、今朝は10キロ走ってきちゃった」
「……なぜそこまで」
「だって、今日のデートは絶対このパンツはきたかったんだもーん。武長くんとの夏休みデートのために買ったんだから!」
スナコにはわからない。すべては無駄なのに。
きれいになってなんになるというのだろう。人の評価を気にして一喜一憂するくらいなら、最初から女を捨てればらくちんなのに、恋なんて錯覚に振り回されて。どうしてみんな気づかないんだろう。
スナコだって、初めからこんなに暗かったわけではない。中学までは、普通に友達と恋の話で盛り上がるような、普通の女の子だったのだ。
だが、「ブス」と言われてフラれてから、それまでスムーズだった普通の女子学生の生活が軋(きし)み始めた。みんなの笑顔がまぶしかった。うまく笑えなくなっていた。
そうやって徐々に引きこもり始めたスナコだったが、そうしているうちに気づいたのだ。女を捨てた生活、まぶしいものと無縁の闇が、こんなにも居心地よく、素晴らしいものだということに!
(ああ、みんなにも教えてあげたい)
「ところでスナコちゃん。その大量のトマトはどうするの? 今晩はパスタ?」
「冷やしトマトにするんです」
「へえー、もしかしてスナコちゃんもダイエットしてるの? 一緒にがんばろうよ」
「……しません」大通りの喧騒(けんそう)から離れた住宅街の一角。前方に延々と続くバラの垣根が見えてくる。
高級住宅街が立ち並ぶこのあたりでも異彩を放つ、だだっ広い敷地にだだっ広い前庭。色とりどりのバラが咲き乱れる庭の奥には、ルネサンス様式を基調としたまっ白い洋館が威風堂々とたたずんでいる。
たまたま通りかかった人はこの洋館を見て迎賓館(げいひんかん)かなにかの記念館かと思うところだが、ここはスナコの叔母の家。こう見えても下宿である。
ここにスナコは、同じ高校に通う「まぶしいものたち」と同居している。「まぶしいものたち」=森高(もりこう)名物、カリスマ美少年4人組。乃依ちゃんが思いを寄せる織田(おだ)武長は、そのうちのひとりだ。誰もがうらやむ同居生活も、スナコにとっては体が溶け出しそうなほどのまぶしさに耐えなければならない過酷な毎日。
その「まぶしいものたち」が待つ中原屋敷の前。車の中から、スーツを着た男たちが屋敷の様子をうかがっていた。
「うん、確かに龍脈(りゅうみゃく)の上に建てられてる。風水的にも理想的だね」
「では手配に入ります」
「うん、軽く中も見ておいてね。後で内装してもいいけど、この国はなんでも高いから」
斜め前方に停められたその車を気にも留めずに、足取り軽い乃依ちゃんと、暑さででろでろになったスナコは屋敷に吸い込まれていく。






